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国際平和拠点ひろしま

【レポート】ひろしまジュニア国際フォーラム(12月13日)

   

     

2020年12月13日、第5回ひろしまジュニア国際フォーラムにおいて、核軍縮および平和構築を推進するアクション・プランである「広島宣言」が発表され閉幕しました。

     

     

新型コロナウイルス感染症拡大によるひろしまジュニア国際フォーラムのオンライン開催

2020年のひろしまジュニア国際フォーラムには、世界14カ国から30人の高校生が参加しました。例年であれば、参加者が広島に4日間集まり、締めくくりとして、一つの広島宣言を発表します。2020年のフォーラムは、新型コロナウイルス感染症の影響で、週に1日ずつ3週間にわたりオンラインで3つのセッションをおこない、5つのグループが、それぞれの広島宣言を発表しました。

オンラインでの開催は、環境としては難しい部分もありましたが、そのことで参加者の熱意が削がれることはありませんでした。被爆証言講話や核軍縮および平和構築の専門家からの講義を受けるワークショップの後、高校生たちは、この重要な問題を解決していく上での課題や、その解決策、自分たちが貢献できることを議論しました。そして議論の結果を「広島宣言」としてまとめました。

    

     

広島宣言は、主に以下の4つの分野を網羅しています。

●核兵器廃絶

●平和構築

●若者の役割

●広島の役割

    

    

核兵器廃絶

   

相互不信と利己主義的な政治手法が見受けられるグローバル環境が、各国の核兵器削減を阻む最大の障害となっています。また、全般的に、市民の核兵器に関する問題意識の欠如も、核兵器廃絶の取り組みの妨げとなっていると指摘されました。

各国における特定の関心事や文化的配慮を相互に理解し、認識を深め、さらに多くの国際会議やプロジェクトを立ち上げることが、いくつかの広島宣言の中で提案されています。どのグループも、核兵器開発の歴史や背景、実験の経緯、これまでに世界に与えた影響、将来への危険性について網羅した、核兵器に関する教育プログラムの導入と開発を求めていました。このような教育は「核兵器は世界にとって危険であり、根絶しなければならない」という共通認識につながり、その結果、核兵器に対する否定的な考え方が広まり、廃絶への重要な第一歩となります。広島・長崎の被爆者の証言を広く共有していくことも、核兵器の脅威を世界に伝える重要な手段であり、あるグループが言及した「核のタブー」を作り出すと考えられています。

また、あるグループは、核兵器廃絶を実現するという信念の欠如や、核廃絶に向けて活動する国際機関の力量を疑問視することが、変革の大きな障害になっていると指摘しています。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)などの国際キャンペーンへの参加や、核兵器禁止条約(TPNW)や核兵器不拡散条約(NPT)などの国際条約への批准は「どうしようもない」という世論を変えていく重要な一歩と考えられています。参加者は、核兵器に反対する小さな国々に望みを見出し、核兵器は「必要悪」との見方を変えるための「ピア・プレッシャー(仲間からのプレッシャー)」を各国で生み出すモデルだと考えています。また、別のグループは、日本が自らTPNWを批准することで、世界の核兵器廃絶運動のリーダー的役割を果たすべきであり、そうなるよう日本政府を説得するには、大量の署名を集めることが一つの手段であると強調しました。

    

     

平和構築

    

    

核兵器廃絶への道のりは、長いかもしれませんが、少なくともその目的は明確です。平和構築に関わる問題も、同様に難しく、解釈の仕方も様々です。広島宣言の平和構築に関するセクションでは、参加者はフォーラムでの講演や議論を通して、平和構築がいかに複雑かを実感していました。

どのグループも「平和」に様々な意味があることを理解しました。「消極的平和」と表現される武力紛争や暴力を超え「積極的平和」の構築に向けて、平和構築の障壁となる構造的暴力、目に見えない暴力につながる要素を取り除くことが必要だと、すべてのグループが理解しました。

広島宣言では、富、ジェンダー、教育の分野における構造的不平等の解消が、平和構築活動の中核となり、これらの分野のいずれかで平等性を高めることが、3つの分野すべての改善につながると述べています。あるグループは、富の不平等に対処する方法として、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に沿った展開を示しました。

2020年の広島宣言は,全体として、圧倒的にポジティブなもので、その目標は達成可能だという若々しい自信に満ちています。しかし、平和構築は世界にとって大きな挑戦であるということも間違いありません。あるグループが指摘したように、意見、理想、倫理の違いは回避できるものではありません。そして、平和構築の目的は、対立が生じる前に相互理解に基づいてこれらの違いを理解する空間やシステムを構築することであると指摘した点は重要です。このようなフォーラムは、このようなスキルを実際の生活の中で実践する機会を提供するものであり、閉会の挨拶で示されたように、あらゆる国、文化、信念を持つ人々が互いに関わり合えるフォーラムやイベントを開催することの大切さが、広島宣言のすべてにおいて強調されています。

    

    

若者の役割

   

   

参加者全員が、知識を持つことが平和構築の鍵であることを強く感じています。そして、学校カリキュラムの中で平和教育に力をいれるべきであるとする一方で、核兵器や平和構築の問題については、自ら学んでいく責任があると感じています。

どのグループも、効果的にSNSを利用して、若者の間で政治問題への関心を促したり、投票、署名、平和イベント、 セミナー、会議への参加といった、自分たちの周りの世界を変えるためには、自分たちがどのように貢献できるかという認識を広めることについて言及しています。SNSが平和を推進するのではなく、不和を生み出すプロパガンダ・ツールとして使用される恐れもありますが、その一方で、平和問題にもっと関わってもらえるよう、SNS企業に働きかけるという提案も、広島宣言の中で言及されました。

    

     

広島の役割

   

   

どの広島宣言にも、核廃絶と平和構築を推し進めるためには被爆者の貴重な体験談を広く共有することが重要であると示されており、被爆者の証言が参加者の心に深く響いたことが伺えます。また、原爆ドームや広島陸軍被服支廠などの被爆建物は、今後何十年も、記憶の証として残していくため、継続的かつ積極的に保存していくことを求めました。

参加者はとても熱心で志を持ち、行動を起こす準備もできています。しかし、参加者は、広島が平和の中心としてみんなを先導し、サポートし、宣言に掲げた公約を実行するために必要な体制を整えていくことにも期待しています。

その中で、ひろしまジュニア国際フォーラムのようなフォーラムを、もっと頻繁に開催することや、世界中の人々が気軽に参加できるイベントを開催することで、広島流の平和教育を世界に発信していくことを求めています。そして何よりも、大きな悲劇の中で得られた、世界でも類を見ない立ち位置を活かして、広島が世界の都市との架け橋となることを求めています。

   

   

まとめ

    

    

2020年ひろしまジュニア国際フォーラムの参加者は、この広島宣言をフォーラムの締めくくりとして捉えるだけでなく、今後の行動の出発点として捉えています。参加者全員の結びの言葉として「地球に住む者として、そして未来の若いリーダーとして、私たちは、完全な非核化、非武装化、平和実現に向けて、小さな変化から、より大きな変化をもたらすため、ここにいます。私たちの力と責任を認識し、ここに私たちの決意を強く宣言します」と述べました。参加者のみなさんの今後の活躍を期待しています。

 

    

    

広島宣言を見る

関連情報

ひろしまジュニア国際フォーラム2020

広島県は,国内外の高校生等が国際平和についての討議や交流等を行い,平和のメッセージを世界に発信することを通じて,次の世代の人材育成を行うことを目的にひろしまジュニア国際フォーラムを開催しています。

ひろしまジュニア国際フォーラムについて

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