10月24日から10月30日は国連軍縮週間です。
軍縮週間にあわせ,昨今の核軍縮の状況について紹介します。
広島県では,核軍縮に向けた各国の取組状況を分析・評価するひろしまレポートを2013年から発行しています。今回は,2013年から2020年のひろしまレポートをもとに,核軍縮の状況を紹介します。
核軍縮に向けた各国の取組状況を理解していただき,国際社会における核兵器廃絶のプロセスが着実に前に進むために必要なことを考えていただければ幸いです。
核兵器の数は約5,000発減少
初めて発行したひろしまレポート2013には,2012年1月時点の世界の核兵器数が19,055と記載されています。最新のひろしまレポート2020によると,2019年1月時点の核兵器数は13,895となっており,この7年間で5,160発の核兵器が削減されました(グラフ)。
一方でひろしまレポート2020では,核兵器の近代化等について次のように指摘しています。
「核保有国はいずれも核戦力の近代化を継続し、なかでもロシア及び中国は核弾頭搭載可能な各種の運搬手段の新たな開発・配備を積極的に推進している。 」
核軍備管理条約の崩壊の危機と核兵器禁止条約の成立
核兵器の9割以上を保有するアメリカとロシアが核軍縮分野において特定兵器の全廃を史上初めて盛り込み,冷戦終結を後押しした条約である中距離核戦力全廃条約(INF条約)が2019年8月2日に失効しました。代替え措置なしの失効に新たな核軍拡競争の始まりと核兵器使用のリスクの高まりが危惧されています。
さらに,米国とロシアによる核軍縮の枠組みで,2018年までの両国の戦略核弾頭の配備数などの削減を定めた新戦略兵器削減条約(新START)は,2021年2月5日に期限を迎えます。新STARTの期限延長についてひろしまレポート2020では次のように指摘しており,核兵器国の核軍縮は停滞していると言えます。
「2021年2月5日に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の期限延長問題に関しても、ロシアが延長を求めるのに対して、米国は関心がないことを示唆している。米国は、米露だけでなく中国の参加が必要だとの主張を強めつつあるが、中国は、「最大の核戦力を持つ米露のさらなる核兵器削減なしには参加しない」との立場を繰り返し表明している。米国も中露が関与する軍備管理交渉を開始するための努力をほとんど行っていない。」
一方,2017年7月7日に核兵器を全面的に禁止する「核兵器禁止条約」が成立しました。
現時点で核兵器禁止条約に批准している国は49か国(2020年10月23日時点)です。核兵器禁止条約は50か国が批准して90日後に発効することになります。この条約については,以下のページをご覧ください。
核兵器禁止条約について:https://hiroshimaforpeace.com/tpnw2019-11/
最新の核兵器禁止条約批准国・署名国: https://hiroshimaforpeace.com/status-tpnw/
核軍縮に関する現在までの年表はこちらからご覧ください。
https://hiroshimaforpeace.com/hiroshima75/present-issue/
非核兵器国の核軍縮の取組
ひろしまレポートでは非核兵器国である27か国の核軍縮の取組についても分析し,評価しています。
ひろしまレポート2013において,核軍縮の分野で最も高い評価の国は日本です。
※ひろしまレポート2013で評価した非核兵器国は,イラン,シリア,豪州,ブラジル,ドイツ,日本,韓国,南アフリカ,スウェーデン,スイスの10か国となります。https://hiroshimaforpeace.com/hiroshimareport/report-2013/
ひろしまレポート2020において最も高い評価の国はオーストリアです。
※ひろしまレポート2020で評価した非核兵器国は,豪州,オーストリア,ベルギー,ブラジル,カナダ,チリ,エジプト,ドイツ,インドネシア,イラン,日本,カザフスタン,韓国,メキシコ,オランダ,ニュージーランド,ナイジェリア,ノルウェー,フィリピン,ポーランド,サウジアラビア,南アフリカ,スウェーデン,スイス,シリア,トルコ,UAEの27か国となります。
ひろしまレポート2020においてオーストリアは次のように評価されています。
「核兵器の非人道性にかかる問題に続き、核兵器禁止条約(TPNW)の成立に向けて主導的な役割を担い、すでに批准している。核軍縮にかかる市民社会との連携にも積極的に取り組んでいる。2019年NPT準備委員会に、条約の履行状況に関する報告書を提出した。」
また,ひろしまレポート2020において日本は次のように評価されています。
「米国の他の同盟国とともに、一足飛びの核兵器の法的禁止ではなく、「前進的アプローチ」による核軍縮の推進を提唱している。TPNWにも署名していない。安全保障面では核兵器を含む米国の拡大抑止に依存しながらも、非核兵器国として、また唯一の被爆国として、NPTや国連をはじめとする多国間枠組みのなかで、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進、核兵器にかかる透明性の向上、軍縮・不拡散教育の実施をはじめ、核軍縮を積極的に推進する立場をとり続けてきた。核軍縮に関する日本主導の国連総会決議には、一部の非核兵器国などから批判も見られた。2019年NPT準備委員会に条約の履行状況に関する報告書を提出した。核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)に参加している。」
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