当サイトを最適な状態で閲覧していただくにはブラウザのJavaScriptを有効にしてご利用下さい。
JavaScriptを無効のままご覧いただいた場合には一部機能がご利用頂けない場合や正しい情報を取得できない場合がございます。

国際平和拠点ひろしま

(12)軍縮・不拡散教育、市民社会との連携

軍縮・不拡散における市民社会との連携 は、2017 年の TPNW 策定過程に象徴され るように228、一層深化している。

2019 年 NPT 準備委員会では、NPDI が 軍縮教育に関する作業文書を提出した229。 国連総会では、韓国がイニシアティブを取 り、豪州、オーストリア、ベルギー、カナ ダ、中国、フランス、ドイツ、日本、カザフスタン、メキシコ、オランダ、ノルウェ ー、フィリピン、ポーランド、スウェーデ ン、UAE 及び米国なども共同提案国となっ た決議「若者、軍縮及び不拡散(Youth, disarmament and non-proliferation)」が投 票なしで採択された230。この決議では、軍 縮・不拡散分野の議論に若者の参加を様々 な方法で促すことなどが国連加盟国に求められた。

軍縮教育を重視してきた日本は、前年に 続き、2019 年 8 月にジュネーブの軍縮会議 日本政府代表部で、高校生平和大使(ユー ス非核特使)の 23 名と現地の各国外交団 (豪州、オーストリア、カナダ、イラン、 オランダ、カザフスタン、スウェーデン、 ドイツ、パキスタン、フィリピン、フィン ランド、ブラジル、フランス、ベルギー、 ポーランド、南アフリカ、ロシアなど)と の意見交換会を開催した。また日本は、国 内外の有識者からなる「核軍縮の実質的な 進展のための賢人会議」(以下、賢人会議) を立ち上げ、同会議議長はそこでの議論を 取りまとめた「議長レポート」231を 2019 年 10 月に公表した。

近年の NPT 運用検討会議及びその準備 委員会、並びに国連総会第一委員会では、 非政府組織(NGO)などが参加するサイ ドイベントが開催されている。2019 年の NPT 準備委員会ではオーストリア、ブラジ ル、カナダ、フランス、ドイツ、日本、カ ザフスタン、メキシコ、オランダ、ノルウ ェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、 英国、米国などが、また国連総会第一委員 会では、豪州、オーストリア、ブラジル、 カナダ、フランス、ドイツ、オランダ、ニ ュージーランド、ポーランド、スウェーデ ン、スイス、米国などがそうしたサイドイ ベントを開催した。

「市民社会との連携」に関しては、各国 政府が核軍縮・不拡散に関する情報をどれ だけ国内外の市民に向けて提供しているか も判断材料となろう。調査対象国のうち、 豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、 中国、フランス、ドイツ、日本、ニュージ ーランド、スウェーデン、スイス、米国、 英国といった国々のホームページ(英語版) では、(核)軍縮・不拡散に関するセクシ ョンが設けられ、程度の差はあるものの他 国と比べて充実した情報が掲載されている。

近年の動きとして、核兵器の開発・製造 などに携わる組織や企業などへの融資の禁 止や引揚げ(divestment)が提案され、実 際にこれを定める国が出始めている。核兵 器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が 2019 年 6 月に公表した報告書によれば、主要な核兵器製造企業 18 社に対して、325 の金融 機関が2017年1月から2019年1月の間に 7,480 億ドル以上を投資した232 。また、 ICAN が 2019 年 5 月に公表した報告書によ れば、フランス、インド、英国及び米国な どの民間企業 28 社が少なくとも 1,160 億ド ル(約 12 兆円)の契約を結んでいること、 中国の核兵器製造関連の国営企業が資金調 達のための債券を発行していること、ロシ ア、イスラエル、パキスタン及び北朝鮮の 動向は不透明であることなどが明らかにさ れた233。他方、10 月に公表した報告書では、 77 の金融機関が、核兵器製造者への投資を 制限するポリシーを制定しているとの調査 結果を明らかにした234。スイス及びルクセ ンブルクでは、核兵器のための投資を制限 する国内法が制定された。また、ノルウェ ー及びスウェーデンの公的年金基金は、核 兵器開発・製造に関与する企業を投資先か ら除外している235。


228 『ひろしまレポート 2018 年版』を参照。

229 NPT/CONF.2020/PC.III/WP26, April 18, 2019.

230 A/RES/74/64, December 12, 2019.

231 “Chair’s Report of the Group of Eminent Persons for the Substantive Advancement of Nuclear Disarmament,” October 2019, https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000529774.pdf.

232 ICAN and PAX, Shorting Our Security- Financing the Companies that Make Nuclear Weapons, June 2019.

233 ICAN and PAX, Producing Mass Destruction: Private Companies and the Nuclear Weapons Industry, May 2019.

234 ICAN and PAX, Beyond the Bomb: Global Exclusion of Nuclear Weapon Producers, October 2019.

235 IKV Pax Christi and ICAN, Don’t Bank on the Bomb: A Global Report on the Financing of Nuclear Weapons Producers—2018, March 2018. 日本では、りそなホールディングスと九州フィナンシャルグループが同種の表明を 行っている。

< 前のページに戻る次のページに進む >

 

目次に戻る