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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023(12) 不可逆性

NPT運用検討会議の最終文書案では、「締約国は、核軍縮の不可逆性を確保するためにさらなる作業が必要であることを認識し、最初のステップとして、核兵器のない世界の達成及び維持における不可逆性措置の適用について理解を深め、条約義務の履行に関連する不可逆性の原則の適用に関する情報を交換するよう奨励される」と記載された。 

ノルウェー及び英国はNPT運用検討会議に提出した作業文書で、核軍縮における不可逆性の考え方について、以下のような問題提起を行った。

NPTコミュニティの間で幅広い支持を得ているにもかかわらず、不可逆性の原則に関する共通の定義や統一された理解は存在しない。この原則に対する理解を深める上で、軍縮の文脈における不可逆性の包括的原則のうち、同様に重要だが異なる2つの側面を区別することが有用であろう。「軍縮に向けた不可逆的なステップ」と「兵器のない世界における不可逆性」である。どちらも明らかに重要であるが、同じものではなく、一方が他方につながるとは限らない。軍縮は不可逆的なステップがなくても達成されうるし、個々の不可逆的なステップがそれ自体で軍縮につながるとは限らない。英国はノルウェーと共同で、不可逆性の原則について、それがどのように理解されてきたか、また、今後どのような取組が可能かについて論文を執筆している。英国はすべての国に対して、不可逆性とそれが実際に何を意味するのかについての理解を深めるために、我々と協力するよう求める315。

 

 

A) 核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施または計画
米露による新STARTでは、過去に締結された主要な二国間核軍備管理条約と同様に、条約で規定された上限を超える戦略(核)運搬手段について検証を伴う解体・廃棄を実施することが義務付けられている。核弾頭の解体・廃棄については、条約上の義務ではないものの、両国は一方的措置として部分的に実施してきた。このうち米国は、バイデン政権下で2021年に再び、各年に廃棄された核弾頭数を公表した。発表資料によれば、米国は2020年に184発の核弾頭を廃棄した。また、1994~2020年に米国が廃棄した核弾頭数は11,638発であった316。

他の核兵器国からは、核兵器の廃棄に関する新たな報告はなされていないが、フランス及び英国は、退役した核弾頭や運搬手段の解体を行っている。このうちフランスは、NPT運用検討会議に提出した国別報告で、M4 SSBNの解体に着手したことを明らかにした317。

 

B) 核兵器関連施設などの解体・転換
核兵器関連施設などの解体・転換に関して、2022年には顕著な動きは見られなかった。

フランスは、核保有国のなかで唯一、1996年に核実験場の完全かつ不可逆的な閉鎖を決定し、1998年に完全に閉鎖して除染作業を行った318。また、NPT運用検討会議に提出した国別報告では、兵器用核分裂性物質の生産施設(ウラン濃縮工場、再処理工場及びプルトニウム生産炉など)についても解体作業に従事していることを報告した319。米国は、1980年当時には14の拠点で構成されていた核コンプレックスが現在では8となり、冷戦終結以降、従業員数も3分の2に減少していることなどを報告した320。

 

C) 軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質の廃棄や平和的目的への転換など
米露間のプルトニウム管理・処分協定(PMDA、2011年7月発効)321を巡る状況は、ロシアが米国による敵対的な行為などを理由に2016年10月に履行を停止して以降、打開に至っていない。

米露合意に基づいて計画された混合酸化物(MOX)燃料生産施設(MFFF)について、米国は2018年にプロジェクトを公式に終了させた(『ひろしまレポート2021年版』を参照)。NNSAは、MFFFを核兵器用のプルトニウム・ピット生産施設に改装することを検討している。


315 NPT/CONF.2020/WP.35, December 10, 2021.
316 NNSA, “Transparency in the U.S. Nuclear Weapons Stockpile.”
317 NPT/CONF.2020/42/Rev.1, August 1, 2022.

318 NPT/CONF.2015/10.
319 NPT/CONF.2020/42/Rev.1, August 1, 2022.
320 NPT/CONF.2020/47, December 27, 2021.
321 解体された核弾頭から取り出された米露の余剰プルトニウム各34tを、混合酸化物(MOX)燃料化して民生用原子炉で使用し処分することなどを規定している。

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