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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023(11) 核軍縮検証

現在、核軍縮検証を規定・実施しているのは、米露二国間の新STARTだけである。両国は条約発効以来、戦略核戦力の削減に対して、条約で規定された回数の現地査察を毎年実施してきた。しかしながら、2020年4月1日以降、現地査察の中断が続いている(本章第5節(A)を参照)。 

米国が2014年に立ち上げた核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)では、28の参加国(並びに欧州連合(EU)及びバチカン市国)306により、核弾頭の解体、並びに解体された核弾頭に由来する核物質の検証方法・技術に焦点を当てた検討が続けられている。

2020年に開始されたフェーズ3では、「現在の作業方法に立脚し、シナリオベースの議論、実践的演習、技術実証を含むさらなる実地活動に従事する」307とし、以下のような活動が例示された。

➢ 想定される核保有国(X国)とその核事業体を対象とした代表的な国内事例研究に基づくシナリオベースのアプローチを用いて、フェーズ1及びフェーズ2で開発された全体的な検証「ツールキット」の概念やその他の要素がどのようにして実施できるかを実証する。

➢ 不可逆性、透明性、及び核兵器の非生産などの検証設計に関する課題を深掘りし、時間をかけて信頼性を高めていく。
➢ 核兵器関連物質の有無の検出、情報バリアの概念や技術など、フェーズ1及び2で特定されたギャップ領域に対処する。
➢ 政治指導者や核軍縮検証の専門家コミュニティを巻き込むためのアウトリーチ活動を実施し、核軍縮検証に焦点を当てた活動を維持する。

このフェーズ3では、想定される核保有国と核軍縮検証体制の要素を記述したシナリオに焦点を当て、シナリオに対して可能な検証手段をテストするために、査察官、ホスト、技術の3つの作業部会が設置されている308。

IPNDVは2021年6月に、13カ国から40名以上の技術・政策専門家が参加して、道路移動式ICBMから弾頭を取り外し、保管場所に置くことを検証・監視するための仮想演習をオンラインで実施した309。また、9月にはオンラインで2日間のシンポジウムを開催し、米欧の政府関係者による報告を得つつ、IPNDVの6年間の活動を振り返るとともに、幅広い文脈で核軍縮検証を可能にする技術について議論がなされた310。また2022年12月には、フェーズ3における作業をレビューし、2023年の作業計画を策定することなどを目的として、豪州で総会が開催された311。

核軍縮検証に関しては、2015年に英国、米国、ノルウェー及びスウェーデンが「QUAD」イニシアティブを立ち上げ、活動を継続している。NPT運用検討会議に提出した作業文書では、2017年に実施した多国間演習の教訓に基づき、検証戦略及び検証技術の2つのワークストリームを編成して、研究・分析を行っていること、2022年までの期間にそれぞれの作業プログラムに焦点を当て、その結果をもとに、次の2年間で2025年NPT運用検討サイクルの期間内に、演習を含む共通の実質的な成果物にそれらを統合する予定であることを紹介した312。

また、フランス及びドイツは、IPNDVの枠組みのなかで両国がイニシアティブをとって2019年9月と2022年4月に実施した核軍縮検証演習(NuDiVe)について、「核不拡散の義務や国家安全保障上の制約から、査察官の立会いがない密室で行わなければならない核弾頭解体の際に、核物質の転用がないことを確認するための査察手続きを模擬する演習を実施」したことを紹介した313。

NAM諸国はNPT運用検討会議で、核兵器計画から除去される核分裂性物質に適用される検証措置の発展などについて、IAEAの関与を求めた。NAM諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置を受諾すること、核軍縮ステップを監視・検証するための常設委員会をNPT運用検討会議で設置することを求めた314。

NPT運用検討会議の最終文書案では、「締約国は、核軍縮を支援し、第6条の履行に向けた効果的なステップとして、多国間軍縮検証及び能力構築を発展させるイニシアティブへの支援を強化し、この問題に関する核兵器国及び非核兵器国のパートナーシップの重要性を考慮し、核軍縮検証に関する概念的及び実践的作業をさらに進め、すべての締約国の幅広い参加を奨励することにコミットする」と記載された。


306 3核兵器国(フランス、英国及び米国)のほか、アルゼンチン、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、イタリア、日本、ヨルダン、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE。中国及びロシアはフェーズ1にはオブザーバー参加していたが、フェーズ2には参加しなかった。
307 IPNDV, “Phase III Programme of Work,” https://www.ipndv.org/wp-content/uploads/2020/06/IPNDV_Phase_ III_Programme_of_Work.pdf.
308 IPNDV, “Working Groups,” https://www.ipndv.org/about/working-groups/.
309 IPNDV, “IPNDV Conducts Virtual Nuclear Disarmament Verification Exercise,” June 21, 2021, https://www. ipndv.org/news/inpdv-conducts-virtual-nuclear-disarmament-verification-exercise/.
310 IPNDV, “Innovations in Nuclear Disarmament Verification: Summary of the IPNDV Virtual Symposium,” October 26, 2021, https://www.ipndv.org/news/innovations-in-nuclear-disarmament-verification-summary-of-the-ipndv-vir tual-symposium/.

311 The U.S. Department of State, “International Partnership for Nuclear Disarmament Verification (IPNDV) Sydney Plenary,” December 2, 2022, https://www.state.gov/international-partnership-for-nuclear-disarmament-verificati on-ipndv-sydney-plenary/.
312 NPT/CONF.2020/WP.2, November 4, 2021.
313 NPT/CONF.2020/WP.18/Rev.1, July 7, 2022.
314 NPT/CONF.2020/WP.24, November 21, 2021.

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