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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024(11) 核軍縮検証

現在、核軍縮検証を規定・実施しているのは、米露二国間の新STARTだけである。両国は条約発効以来、戦略核戦力の削減に対して、条約で規定された回数の現地査察を実施してきた。しかしながら、2020年4月1日以降、現地査察の中断が続いている(本章第5節(A)を参照)。

国連の枠組みでは、2019年の国連総会決議251に基づいて設置された「核軍縮検証問題をさらに検討するための政府専門家グループ」が、2023年6月に最終報告書を公表した252。報告書では、同グループでの議論を以下のように取りまとめた。

同グループは、核軍縮検証に関していくつかの結論を出した。特に、作業の指針となる核軍縮検証の作業定義を作成し、核軍縮検証の主要な目的及び目標を特定し、信用及び信頼醸成措置の重要性を強調し、既存の経験を棚卸しすることの価値を強調し、科学技術専門家グループの概念に関する作業量を認識し、核軍縮検証に関する作業を継続することの有用性を認識し、女性及び男性に平等な機会を提供すべきであることを強調し、平和及び軍縮教育を通じた核軍縮検証の意識向上が能力構築の一部と見なされる可能性について議論した。
政府専門家グループは、特に、国連加盟国及び国際軍縮機構の関連機関が、それぞれの権限にしたがって本報告書を検討し、核軍縮検証に関する議論を継続するよう勧告した。
また、国連加盟国に対して、核軍縮検証問題に関する作業を継続するとともに、適宜、能力構築のための地域的アプローチを含む能力構築努力を検討すること、並びに国連加盟国に対して、核軍縮検証を含む核軍縮努力への完全かつ有意義な関与を可能にするため、男女の機会均等を確保するための適切な措置を講じることを勧告した。

米国が2014年に立ち上げた核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)では、28の参加国(並びに欧州連合(EU)及びバチカン市国)253により、核弾頭の解体、並びに解体された核弾頭に由来する核物質の検証方法・技術に焦点を当てた検討が続けられている。2022年12月の総会で、パートナー国は相互調整と情報交換のより円滑な実施を目的として作業部会の構成を見直し、以下の4作業部会を設置した254。

➢ 制限作業部会:想定国(イピンドビア)がその核兵器保有量を最大500個に制限する合意によって拘束されるシナリオの検証オプションを検討
➢ 削減作業部会:イピンドビアがその核兵器保有量を500個からゼロに削減するシナリオの検証オプションを検討
概念作業部会:制限シナリオと削減シナリオに関連する横断的な概念問題を検討
➢ 技術トラック:他の3つの作業部会に関連する技術を検討

2023年4月にはアルバカーキー255で、また9月にはブダペスト256で上記の作業部会会合が開催され、それぞれ割り当てられたテーマについて議論や検討を行った。

核軍縮検証に関してはこのほかに、2015年に英国、米国、ノルウェー及びスウェーデンが「QUAD」イニシアティブを立ち上げ、活動を継続している。第10回NPT運用検討会議に提出した作業文書では、2017年に実施した多国間演習の教訓に基づき、検証戦略及び検証技術の2つのワークストリームを編成して、研究・分析を行っていること、2022年までの期間にそれぞれの作業プログラムに焦点を当て、その結果をもとに、次の2年間で2026年NPT運用検討サイクルの期間内に、演習を含む共通の実質的な成果物にそれらを統合する予定であることを紹介した257。また、フランス及びドイツは、IPNDVの枠組みのなかで両国がイニシアティブをとって2019年9月と2022年4月に核軍縮検証演習(NuDiVe)を実施した258。

2023年3月には、オランダ、ノルウェー及びスイスの支援を受けて、国連軍縮研究所(UNIDIR)がスイス軍などと協力して「メンツィンゲン検証実験」(特定の貯蔵施設に核兵器がないことを検証するための実用的な手順をテストするために計画されたもの)を実施した259。

他方、ロシアは以下のように述べて、核軍縮検証に関する現在の取組に批判的な見方を示した。

核軍縮検証(NDV)の問題は、近年人気を集めている。しかし、現段階での綿密な議論による潜在的な利益は、大きく過大評価されていると強く考える。国連政府専門家会合における議論では、NDVへのアプローチとその範囲に関して統一性がないことが確認された。最も重要なことは、核軍縮協定を締結するために将来必要となる包括的な交渉作業と切り離した形で、検証手続きを「早期に」発展させることの是非について意見が一致していないことである。このような様々な見方はすべて、同グループの最終報告書に記載されている。この報告書には、NDVの基礎となるべき基本原則に関する重要な合意声明も多数含まれている。当面の間、NPTコミュニティーが条約の運用検討プロセスのためにこのテーマについて多くのことを付け加えることはないだろう260。

NAM諸国はNPT準備委員会で、核兵器計画から除去される核分裂性物質に適用される検証措置の発展などについて、IAEAの関与を求めた。NAM諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置を受諾すること、核軍縮ステップを監視・検証するための常設委員会をNPT運用検討会議で設置することを求めた261。


251 A/RES/74/50, December 19, 2019.
252 A/78/120, June 23, 2023.
253 3核兵器国(フランス、英国及び米国)のほか、豪州、ブラジル、カナダ、ドイツ、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAEなど。中国及びロシアはフェーズ1にはオブザーバー参加していたが、フェーズ2には参加しなかった。
254 “IPNDV April 2023 Working Meeting, Albuquerque, New Mexico,” IPNDV, https://www.ipndv.org/events/ipndv-april-2023-working-meeting-albuquerque-new-mexico/.
255 Ibid.
256 “IPNDV September 2023 Working Meeting, Budapest, Hungary,” IPNDV, https://www.ipndv.org/events/ipndv-september-2023-working-meeting-budapest-hungary/.
257 NPT/CONF.2020/WP.2, November 4, 2021.
258 NPT/CONF.2020/WP.18/Rev.1, July 7, 2022.
259 Pavel Podvig, “Menzingen Verification Experiment: Verifying the Absence of Nuclear Weapons in the Field,” UNIDIR, July 31, 2023, https://unidir.org/publication/menzingen-verification-experiment-verifying-the-absence-of-nuclear-weapons-in-the-field/.
260 “Statement of Russia,” Cluster 1, First PrepCom for the 11th NPT RevCon, August 3, 2023.
261 NPT/CONF.2026/PC.I/WP.15, June 14, 2023.

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