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国際平和拠点ひろしま

(10) 核軍縮検証

核軍縮に関する検証は現在、米露二国間の新START のもとで、両国による戦略核戦力削減に対して実施されており、両国は条約発効以来、条約で規定された回数の現地査察を毎年実施してきた。しかしながら、前述のように、前年に続いて2021 年も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で査察官の相手国への入国が難しく、現地査察を実施できなかった。
米国が2014 年に立ち上げた核軍縮検証のための国際パートナーシップ(IPNDV)では、28 の参加国(並びに欧州連合(EU)及びバチカン市国)218により、核弾頭の解体、並びに解体された核弾頭に由来する核物質の検証方法・技術に焦点を当てた検討が続けられている。
2020 年に開始されたフェーズ3 では、「現在の作業方法に立脚し、シナリオベースの議論、実践的演習、技術実証を含むさらなる実地活動に従事する」219とし、以下のような活動が例示された。

➢ 想定される核保有国(X 国)とその核事業体を対象とした代表的な国内事例研究に基づくシナリオベースのアプローチを用いて、フェーズ1 及びフェーズ2 で開発された全体的な検証「ツールキット」の概念やその他の要素がどのようにして実施できるかを実証する。
➢ 不可逆性、透明性、及び核兵器の非生産などの検証設計に関する課題を深掘りし、時間をかけて信頼性を高めていく。
➢ 核兵器関連物質の有無の検出、情報バリアの概念や技術など、フェーズ1 及び2 で特定されたギャップ領域に対処する。
➢ 政治指導者や核軍縮検証の専門家コミュニティを巻き込むためのアウトリーチ活動を実施し、核軍縮検証に焦点を当てた活動を維持する。

このフェーズ3 では、想定される核保有国と核軍縮検証体制の要素を記述したシナリオに焦点を当て、シナリオに対して可能な検証手段をテストするために、査察官、ホスト、技術の3 つの作業部会が設置される220。
IPNDV は2021 年6 月に、13 カ国から40 名以上の技術・政策専門家が参加して、道路移動式ICBM から弾頭を取り外し、保管場所に置くことを検証・監視するための仮想演習をオンラインで実施した221。また、9 月にはオンラインで2 日間のシンポジウムを開催し、米欧の政府関係者による報告を得つつ、IPNDVの6 年間の活動を振り返るとともに、幅広い文脈で核軍縮検証を可能にする技術について議論がなされた222。

 

核軍縮検証に関しては、2015 年に英国、米国、ノルウェー及びスウェーデンが「QUAD」イニシアティブを立ち上げ、活動を継続している。2017 年に実施した多国間演習の教訓に基づき、検証戦略及び検証技術の2 つのワークストリームを編成して、研究・分析が行われている223。
NAM 諸国は2019 年のNPT 運用検討会議準備委員会で、核兵器計画から除去される核分裂性物質に適用される検証措置の発展などについて、IAEA の関与を求めた。NAM 諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置を受諾すること、核軍縮ステップを監視・検証するための常設委員会をNPT 運用検討会議で設置することを求めた224。
2021 年の国連総会で採択された決定「核軍縮検証」では、2020 年に設置された政府専門家グループの追加会合と非公式会合間協議会について、新型コロナ禍により2021年に開催できなかったため、これらの会議を2022 年及び2023 年に開催し、核軍縮検証問題をさらに検討するよう要請した。この決定は、賛成187、棄権2(イラン、シリア)、反対0 で採択された。


218 3 核兵器国(フランス、英国及び米国)のほか、アルゼンチン、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、イタリア、日本、ヨルダン、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE。中国及びロシアはフェーズ1 にはオブザーバー参加していたが、フェーズ2 には参加しなかった。
219 IPNDV, “Phase III Programme of Work,” https://www.ipndv.org/wp-content/uploads/2020/06/IPNDV_Phase_III_Programme_of_Work.pdf.
220 IPNDV, “Working Groups,” https://www.ipndv.org/about/working-groups/.
221 IPNDV, “IPNDV Conducts Virtual Nuclear Disarmament Verification Exercise,” June 21, 2021, https://www.ipndv.org/news/inpdv-conducts-virtual-nuclear-disarmament-verification-exercise/.
222 IPNDV, “Innovations in Nuclear Disarmament Verification: Summary of the IPNDV Virtual Symposium,” October 26, 2021, https://www.ipndv.org/news/innovations-in-nuclear-disarmament-verification-summary-of-the-ipndv-virtual-symposium/.
223 QUAD のホームページ(https://quad-nvp.info/)を参照。
224 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.14, March 21, 2019.





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