「HOPeユース大使」参加者インタビュー
佐藤優実(さとう・ゆうみ)さん。
2021年11月、「へいわ創造機構ひろしま(HOPe)」は核兵器と持続可能な未来について考える若い世代「HOPe核なき持続可能な未来ユース大使」を3名任命しましたが、その1人、佐藤優実さん(21)は広島で育ち、現在はドイツの「ベルリン自由大学」に留学しています。HOPeユース大使としてのこれまでの活動とドイツで何を感じたかについて話を聞きました。
(ベルリン自由大学)
●HOPeユース大使について
私は祖母が被爆者で、母が平和公園でガイドをやっていたこともあって、昔から平和や原爆に関心があったんです。高校時代は「グローバル未来塾inひろしま」に参加して、核兵器の悲惨さや核問題について学びました。その後、大学で上京したんですけど、東京は広島と違って原爆がいつ落ちたのかも知らない人も多くて……それで「平和について私が発信しないと!」という気持ちが芽生えたときに今回の募集を知ったんです。
ユース大使としては、まず県内外の若者20人で提言作成ワークショップを行いました。若い世代ならではの視点とツールを用いて、SDGsや核兵器の問題をどう伝えるか考えたのです。「グローバル・ヒバクシャ」という核実験などで被害を受けた方の存在についても学びました。アメリカに行って核不拡散条約(NPT)再検討会議に参加したメンバーもいます。今後はSNSを通じてヒロシマを知ってもらう取り組みなどを進めていく予定です。
●ベルリンで気付いたこと
大学の交換留学制度を利用して、2022年9月からベルリンに来ています。留学先をドイツにしたのは、日本とドイツは敗戦国なのに戦後めざましい発展を遂げたという共通点があって、両者の戦争に対する向き合い方を比較したら面白いと思ったからです。
ドイツに来て驚いたのは、戦争の悲惨さを遺す取り組みがあちこちで行われていることです。ドイツ全土の路上には、ナチスの犠牲になって亡くなった人の名前や生年月日を10cm四方の真鍮プレートに刻んだ「つまずきの石」が埋められています。ベルリンにはユダヤ人のためのミュージアムや、ナチス政権に関するミュージアムなど戦争関連の施設が多数あります。またカイザー・ヴィルヘルム記念教会やアンハルター駅の遺構は、空襲で崩れた状態のまま保存されています。国全体で戦争があったという事実を後世に引き継いでいこうとしていることを感じます。
(つまずきの石)
(カイザー・ヴィルヘルム記念教会)
●日本との違い
ナチス政権が戦争をはじめたことは肯定できませんが、その後の世代が歴史を遺そうとしている姿勢はすごいと思います。日本でこれに相当するのは原爆ドームがまず思い当たりますが、たとえば東京では東京大空襲の記憶を思い出させる建物は見たことがありません。同じ首都なのに戦争遺構の数は大きく違います。
その裏には戦争に対する向き合い方の違いがあると思いました。ドイツには加害者としての反省があって、悲惨な歴史を二度と繰り返さないという強い想いを感じます。日本の場合、広島や長崎では戦争の悲惨さが強く訴えられていますが,日本全体でももっと強くなればいいなと思います。
(ユダヤ人の碑)
●将来について
私はドイツでの自己紹介のとき「広島出身で祖母は被爆者」と伝えるようにしています。ヒロシマのことはほぼ全員が知っていますが、「まだ街に放射能は残ってるの?」「街には誰も住んでないんでしょ?」と聞かれたことはショックでした。原爆が落とされたことは知られていても、その後の復興や現在の状況、原爆の正確な被害は何も知られてないのです。それを知って、私の中ではますます平和について伝えていきたいという想いが膨らんでいます。
今はもう少し海外で学び続けたいという気持ちが強いです。どこにいてもヒロシマは私のアイデンティティ。将来も核廃絶にアプローチできる仕事に就きたいと思っています。
佐藤優実(さとう・ゆうみ)さん
国際基督教大学3年生。専攻は平和研究。旅が好きでベルリンでも美術館や博物館巡りを楽しんでいる。
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