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国際平和拠点ひろしま

(11) 不可逆性

A) 核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施または計画
米露による新START では、過去に締結された主要な二国間核軍備管理条約と同様に、条約で規定された上限を超える戦略(核)運搬手段について、検証を伴う解体・廃棄を実施することが義務付けられている。核弾頭の解体・廃棄については、条約上の義務ではないものの、両国は一方的措置として部分的に実施してきた。このうち、米国は年間に廃棄された核弾頭数を公表していたが、国防総省は、その新たな公表は行わないことを決定した224。
他の核兵器国からは、核兵器の廃棄に関する新たな報告はなされていないが、フランス及び英国は、退役した核弾頭や運搬手段の解体を行っている。

B) 核兵器関連施設などの解体・転換
核兵器関連施設などの解体・転換に関して、2020 年には顕著な動きは見られなかった。核保有国から新たな情報の公開もなされなかった。
フランスは、核保有国のなかで唯一、1996 年に核実験場の完全かつ不可逆的な閉鎖を決定し、1998 年に完全に閉鎖して除染作業を行った225。北朝鮮も2018 年に核実験の閉鎖を宣言し、坑道の入り口を爆破したが、完全かつ不可逆的な閉鎖であるかは確認されていない。

C) 軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質の廃棄や平和的目的への転換など
米露間のプルトニウム管理・処分協定(PMDA、2011 年7 月発効)226を巡る状況は、ロシアが米国による敵対的な行為などを理由に2016 年10 月に履行を停止して以降、打開に至っていない。米国務省の2020年「軍備管理協定遵守報告書」では、前年同様に、ロシアが協定の義務に違反しているとの兆候はないものの、履行の停止は将来の遵守に対する懸念を高めているとした227。
他方、米国は『ひろしまレポート2020年版』でも述べたように、米露合意に基づいて計画された混合酸化物(MOX)燃料生産施設(MFFF)について、建設費の高騰とスケジュールの遅延を理由に、その建設中止、並びにプルトニウムの処分を模索してきた。議会は「希釈・処分オプション」を認めず、MFFF 建設への予算を計上してきたが228、NNSA は2018 年10 月、MFFF建設の事業体に建設にかかる契約終了通知を送付し、このプロジェクトを公式に終了させた229。NNSA は、MFFF を核兵器用のプルトニウム・ピット生産施設に改装することを検討している。


224 米国は年間300〜350 発の核弾頭を解体していると推計されている。Hans Kristensen, “Trump Administration Again Refuses to Disclose Nuclear Weapons Stockpile Size,” Federation of American Scientists, December 3, 2020, https://fas.org/blogs/security/2020/12/nuclear-stockpile-denial-2020/.
225 NPT/CONF.2015/10, March 12, 2015.
226 解体された核弾頭から取り出された米露の余剰プルトニウム各34t を、混合酸化物(MOX)燃料化して民生用原子炉で使用し処分することなどを規定している。
227 The U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation, and Disarmament Agreements and Commitments,” June 2020, p. 27.
228 Kingston Reif, “MOX Facility to Switch to Plutonium Pits,” Arms Control Today, Vol. 48, No. 5 (June 2018), p.29.
229 Timothy Gardner, “Trump Administration Kills Contract for Plutonium-to-Fuel Plant,” Reuters, October 13, 2018, https://www.reuters.com/article/us-usa-plutonium-mox/trump-administration-kills-contract-for-plutonium-to-fuel-plant-idUSKCN1MM2N0.

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