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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2018(11)不可逆性

A)核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施または計画

米露による新STARTでは、過去に締結された主要な二国間核軍備管理条約と同様に、条約で規定された上限を超える戦略(核)運搬手段について、検証を伴う解体・廃棄を実施することが義務付けられている。核弾頭の解体・廃棄については、条約上の義務ではないものの、両国は一方的措置として部分的に実施してきた。

両国は、核戦力の廃棄に関する正確な規模や全体像を公表していない。米国のオバマ前政権は、解体核弾頭数など一定の情報を提供し(表1-8参照)176、2017年1月のトランプ政権発足以降、関連する情報は公表されていない。2017年5月、共和党主導の議会は、退役した核弾頭の解体を加速化するという前政権による提案の実施を禁止すると議決し、解体・廃棄活動に係る予算も、前政権の要求額から19%削減するとした177。

他の核兵器国からは、核兵器の廃棄に関する新たな報告はなされていないが、フランス及び英国は、退役した核弾頭や運搬手段の解体を行っている。

B)核兵器関連施設などの解体・転換

核兵器関連施設などの解体・転換に関して、2017年には顕著な動きはみられなかった。核保有国から新たな情報の公開もなされなかった178。

フランスについては、核保有国の中で唯一、1996年に核実験場の完全かつ不可逆的な閉鎖を決定し、1998年に完全に閉鎖して除染作業を行った179。

C)軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質の廃棄や平和的目的への転換など

2011年7月に発効した米露間のプルトニウム管理・処分協定(PMDA)180に関しては、ロシアが2016年10月に履行を停止するとの大統領令を発表した。2017年4月に公表された米国の報告書では、ロシアが協定の義務に違反しているとの兆候はないものの、履行の停止は将来の遵守に対する懸念を高めているとした181。これに対してロシアは、米国の敵対的な行為、ならびに協定が署名された2000年以来の状況の劇的な変化への対応として履行を停止しただけだと批判した182。

トランプ米政権は前政権と同様に、(米露合意に基づいて計画された)MOX生産施設(MFFF)の建設の終了、並びにプルトニウムの希釈・処分を模索している183。その理由として、MFFF建設費の高騰とスケジュールの遅延が挙げられてきた。これに対して、議会は依然として「希釈・処分オプション」を認めておらず、MFFF建設への予算を計上している。また「希釈・処分オプション」を受け入れる条件として、MOX計画よりもコストが半額以下であること、エネルギー長官がそのオプションを完了するのに必要な法令・規制の変更の詳細を提供すること、並びにサバンナ・リバー・サイトの「持続可能な将来」を確立することを挙げている184。

米国はNPT運用検討プロセスなどで、軍事用の核分裂性物質を大幅に削減してきたことを明らかにしてきた。2017年のNPT準備委員会では、2009年に95.4トンあったプルトニウムのうち、61.5トンが米国の防衛のニーズを超えた余剰分であり、また2004年時点で686トンあったHEUのうち、374トンが核兵器計画から除去され、そこから153トン以上が民生用原子炉の燃料として使用するために希釈されてきたと公表した185。


[176]『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。

[177] Kingston Reif, “Congress Limits Warheads Dismantlement,” Arms Control Today, Vol. 47, No. 5 (June 2017), p. 31.

[178] 前年までの動向に関しては、『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。 

[179] NPT/CONF.2015/10, March 12, 2015.

[180] 解体する核弾頭から取り出された米露の余剰プルトニウム各 34 トンを、MOX 燃料化して民生用原子炉で使用 し処分するというもの。

[181] U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation, and Disarmament Agreements and Commitments,” April 2017, https://www.state.gov/t/avc/rls/rpt/2017/270330.htm.

[182] Maggie Tennis, “INF Dispute Adds to U.S.-Russia Tensions,”Arms Control Today, Vol. 47, No. 5 (June 2017), pp. 29-30.

[183] Kingston Reif, “Trump Budget Supports MOX Termination,” Arms Control Today, Vol. 47, No. 6 (July/August 2017), p. 30.

[184] Frank von Hippel, “Fissile Material Issues in the U.S. National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2018,” IPFM Blog, December 17, 2017, http://fissilematerials.org/blog/2017/12/fissile_material_issues_i.html.

[185] “Statement by the United States,” Cluster 1, First Session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference, May 4, 2017.

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